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札幌地方裁判所 昭和44年(わ)116号 判決 1969年4月09日

主文

被告人を懲役一年六月に処する。

この裁判が確定した日から四年間右刑の執行を猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。

理由

一、罪となるべき事実

第一、被告人は<省略>

第二、被告人は同年一月一〇日ごろ同市琴似町新川三二六番地附近道路に駐車中の普通乗用自動車内において、行使の目的をもつて、北海道公安委員会の作成にかかる同委員会の署名押印のある自己宛の第一種普通自動車運転免許証の交付年月日欄の「昭和40年」の「0」および有効期限欄の「昭和43年」の「3」の各数字をそれぞれボールぺンの先の金属部分および指の爪で抹消したうえ、その跡にボールペンでそれぞれ「2」および「5」の各数字を書き入れ、もつて同委員会作成名義の有効期限を同四五年七月一三日までとする被告人に対する第一種普通自動車運転免許証一冊(昭和四四年押三九号の一)を作成偽造した。

第三、被告人は公安委員会の運転免許を受けないで、同年同月二九日午後四時ごろ同市南四条西六丁目附近道路において、普通乗用自動車を運転した。

第四、<省略>

第五、<省略>

二、証拠の標目<省略>

三、法令の適用

<前略> 次に本件公訴事実中被告人が昭和四四年一月二九日午後四時ごろ自動車を運転するにあたり偽造にかかる判示運転免許証を携帯して行使したとの点について考えるに、刑法一五八条一項にいう偽造公文書の「行使」とは、偽造公文書を情を知らない他人に対し真正な公文書のように装つて使用し、他人がこれを閲覧できる状態においたことをいうと解すべきであるが、本件のように、運転手が運転の際偽造の運転免許証を単にポケット等に携帯所蔵しているだけでは、他人に対する右のような外部的行為がない(被告人は前記日時に警察官から運転免許証の呈示を求められた際右偽造の運転免許証を呈示せず無免許運転である旨申し立てている)。とともに、未だもつて他人が右偽造の運転免許証を真正な文書として閲覧できる状態においたものとは云えないから、これを偽造免許証の行使罪にあたるものと解すべきではないが、右の判示第二の公文書偽造罪と牽連犯の関係にあるとして起訴されたものと認められるから、主文において特に無罪の言渡をしない。<以下略>(松野嘉貞 小林充 加藤和夫)

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